春の多摩湖探訪 Part 2
-早春の風に揺れる、森の妖精たち-
写真・文 森の人 泉 健司

西武球場駅から山口観音をへて村山貯水池へ

西武新宿から電車を乗り継いで、西武球場の駅に着いたら、もう村山貯水池は目と鼻の先。駅から5分も歩かない内に、山口観音の山門が見えてきます。せっかくですからちょっと寄っていきましょう。

山口観音は金乗院といい真言宗のお寺で弘法大師の創建と伝えられ本尊は千手観音行基菩薩です。狭山三十三所第一番の札所になっています。また、近くには狭山不動尊があり昭和50年にひらかれたお寺で大阪の畠山 神社から移された多宝塔や東京の芝増上寺から移された勅額門などが目を引きます。

 
中央にそびえるのは山口観音の本堂。本堂の天井には墨絵の「鳴き竜」が描かれています。

撮影:RDC-i700
 
山口観音では新田義貞が鎌倉攻めの際、ここに立ち寄り戦勝の祈願をしていったのだそうです。
写真は義貞公霊馬。
なかなかかわいい。

撮影: RDC-7S
 
山口観音のすぐ裏が村山貯水池のダムです。拍子抜けするほどの近さ。でも今は工事中で、一般の方は入れません。堤防周辺の道路や公園にはおびただしい桜が植えられており、なかなかのお花見スポットです。水の干上がったダム湖を覗くよりは桜を愛でた方が健康的なような気もします。気の早い株は例年より1週間以上も早く開花していました。
 
この日はカラスたちもお花見気分だったようですね。

撮影: RDC-7S
 

ヒヨドリたちは、花より団子といったところでしょうか、盛んに桜の花にくちばしをつっこんで蜜を吸っています。昆虫のまだまだ少ないこの時期、彼らがせっせと授粉してくれるおかげで、初夏にはたわわに小さなサクランボがなるのです。

ヒヨドリスズメに混じってカワラヒワも桜の花の蜜を吸ってました。混群といってシジュウカラやスズメ、カワラヒワ、コゲラなどといった小鳥たちは数種類混じった集団で行動することもあるのです。その方が効率よく外敵から身を守れるなどのメリットがあるからなんでしょうね。

だから、よく自分の庭に小鳥たちを呼びたかったっら、まずスズメを呼べって言いますよね。警戒心の強いスズメがいるのを見て、初めて他の鳥も安心して遊びに来るという訳なんです。

 
スズメたちのように乱暴に食いちぎったりしないで、1輪ずつそっと蜜を吸うヒヨドリ。

撮影: RDC-i700
 

上ばっかり見ていないで、足下にも注意を払いましょう。スミレたちが春を競っているはずです。しめり気味な場所が好きなナガバノスミレサイシンは、日本特産の植物で雪の少ない太平洋側で見つかります。

ここで紹介するのは、ちょっと珍しいシロバナナガバノスミレサイシンです。もう一つはどこにでもあるタチツボスミレ。珍しくないからと言って、その美しさが損なわれるわけではないですよね。

 

シロバナナガバノスミレサイシン
Viola bissetii f. albiflora

ナガバノスミレサイシンはいわゆるすみれ色だけれど、この白花品は気品さえ漂う。


撮影: RDC-7S
 

タチツボスミレ
Viola grypoceras

山部赤人が「はるののにいですみれつむ」と歌ったのは、このスミレのことだという説も。なんでも赤人は高血圧で、血圧降下作用のあるスミレ摘みに励んだとか言う研究もあるくらいだ。


撮影: RDC-i700
 

こちらは、どこにでもありそうで、実はなかなか見つけられないカントウタンポポ。萼に見える総苞と呼ばれる部分が下向きに反り返る帰化植物のセイヨウタンポポに住処を奪われて、今ではめっきり減ってしまいました。カントウタンポポとセイヨウタンポポの占める割合を、どれぐらい自然が破壊されているかを示す指標として利用する研究も進められているくらいです。

こういった地際に咲く花たちを撮るのは、ちょっと前まではなかなか大変で、腹這いになって泥まみれで撮るのが普通でしたが、便利になったものです、ファインダーを覗かなくても液晶画面の角度をちょこちょこっと変えるだけで良いんですからねえ。

カントウタンポポ 
Taraxacum platycarpum

カントウタンポポは、都市部では見ることが出来なくなってきている。帰化植物のセイヨウタンポポに住処を奪われてしまったからだ。


撮影: RDC-7S
 

セイヨウタンポポ
Taraxacum officinale

囲んだ部分に注目。セイヨウタンポポでは、このように萼に見える総苞と呼ばれる部分が下向きに反り返るが、もともと日本にあったカントウタンポポは反り返らない。その場で画像にこんな書き込みが出来るのも、なかなか便利だね。


撮影: RDC-i700
 

桜を見ながらダムとは反対方向に左へと進むと、やがて村山貯水池(多摩湖)の真ん中を横切るダムに出ます。

ダム湖の話をしているのに、しょっぱなから水のない景色ばかりで驚いたかも知れませんね。ここまで来て、やぁっと水をたたえた ダム湖のほとりに出るのです。せっかくですから、水辺におりてみましょう。

遠くに西武園のジェットコースターや観覧車も見えるはずです。今は何気ない水辺ですが、季節を選べば柵で囲まれた中には都内ではなかなか見ることのない、珍しい水辺の花たちにも出会えるのです。

 

観覧車は、左岸に見える塔の向こうに霞んでいる。貯水池林はコナラ林が主体で、その他にスギ・ヒノキ植林や、谷筋の奥にはモミ林、湿地にはハンノキ林も見られる。


撮影: RDC-i700

実はこの場所、冬場は水鳥の観察スポットとしても有名なんです。かわいいカンムリカイツブリに会えるのもここです。ただ、マガモたちはやたらと警戒心が強く、なかなか近づけません。

鴨猟でねらわれ続けてきた彼らの体には人間に対する不信感が染み付いているのです。こんな時ズーム機能もあるデジカメは、軽くてほんと重宝します。

ちなみにここで見られる水鳥で目立つものをあげてみると、オナガガモ、コガモ、マガモ、カルガモ、キンクロハジロ、ホシハジロ、カイツブリ、カンムリカイツブリ、カワウといった具合。ちょっとはずれるとカワセミのポイントもあります。

撮影:RDC-i700

マガモ
Anas platyrhynchos

マガモたちは、カメラを向けるとさっさと逃げてしまう。ファインダーを覗くなんて、もってのほか。とはいうものの、今回ばかりは飛び立つところを撮りたかったのさ。


撮影: RDC-200G

へそのあたりでカメラを横むきに構えて液晶パネルでねらいながら、あらぬ方向へ進むかのようにいかにも興味なさそうに近づくのが、ポイントかな。

見張りの青首が警戒してこっちをにらんでいる。アオクビと言っても大根のことではない。マガモの雄は、その色の特徴からそう呼び慣わされている。いわゆる「カモネギ」って言うのはもともとは彼らのことを指しているのだ。嫌われても、仕方ないよね。

警戒心が強いと言えば、ツグミもなかなか撮りにくい鳥です。肉が美味しいためにかつては乱獲されて絶滅の危機に瀕したことさえあるこの鳥、今ではもちろん捕獲禁止です。それでも、料亭などでは韓国から輸入したものや、密漁によるものが出されることさえもあるのだそうです。もちろん、後者の方が断然高級品として取り引きされるのです。

そんなわけで、彼はちっとも近づくことを許してくれません。でも大丈夫。画素数を最高にセットして、フレキシブルな液晶画面を駆使して、まるで興味がないようにさりげなく近づきながらシャッターを押します。後でトリミングするのです。

こんな時はファインダーで覗くのは禁物です。銃でねらわれた忌まわしい記憶が、彼らのDNAに刻み込まれているのか、カメラを向けたとたんに飛び去ってしまいますからね。彼らの動線をさりげなく遮るように近づきながら、何枚でも撮り続けましょう。

なあに、あとで消せば良いんですから。こんな贅沢な使い方は、フィルムを使っていたんでは考えられません。何なら連写モードにしたって良いのです。ランニングコストは0円!むむむ、素晴らしい。

ツグミ
Turdus naumanni

うおおっっっ!お手軽ズームで、こんなに大きく撮れるなんて。ペットボトルみたいにでっかくて重い光学レンズを、持っていくのがおっくうになるなあ。


撮影: RDC-7S
プロフィール

いずみ けんじ
泉   健司

http://www.biotope-garden.com/
ビオトープ・ガーデン提唱者、植物生態コンサルタント、 自然造形作家 1954年愛知県豊橋市に生まれる。
東京農業大学農学科副手を勤めた後、環境アセスメント をはじめとした各種植生調査、フロラ調査の仕事に従事。 ビオトープ・ガーデンを提唱し、TVを初め様々なメディ アで紹介されている。またフラワーアレンジメントや自 然造形物を素材としたクラフト、コンピューターグラフ ィクス、環境音楽の制作など、多岐にわたる活動を行っ ている。
教育活動にも力 を入れており、東京バイオテクノロジ ー専門学校や東京医薬専門学校の非常勤講師も勤める。
農学修士。マミフラワーデザインスクール登録講師。
 
次回は
■絶滅に瀕している植物たち
お楽しみに!

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