スイスの秋〜ベルナーオーバーラントからシャモニーへ
取材・文 岩井 京子

ベルナーオーバーラントの秋は早い。アルプスの斜面に咲き乱れていた高山植物は、早々と来年の春までの深い眠りに入る。

エーデルヴァイスはまだ咲いているだろうか。
高貴な白」を意味するエーデルヴァイス。


赤い登山電車でシニゲプラッテの頂きまで行くと、岩肌に張りつくように咲く花に出逢うことができる。ここは自生地ではないが、他の花と共に大切に保護され、何とも愛らしい。

スイスは国全体が自然を題材にした庭園のようだ。

その昔、険峻な山々に囲まれ、厳しい自然の中で貧困と戦いながら暮らしていた人々は、その自然こそが、たぐいまれな美しさ故に旅人の心を捉えて放さないことに気づき、隅々まで手を入れ、観光立国として完璧なまでのシステムを作り上げた。かつては遠くから仰ぎ見ることしかできなかったような断崖絶壁の上も、今では軽装でふわっと降り立つことも可能だ。

マッターホルン、ユングフラウ、と並び称されるヨーロッパアルプスの最高峰モンブラン。遠くから眺め、麓から仰ぎ見、そしてゴンドラで頂上付近まで登ってみよう。

http://www1.linkclub.or.jp/~swiss/photo/MontBlanc.html

ベルナーオーバーラントの基点、トゥーンから電車を乗り継ぎ、シャレー風の駅舎やレマン湖畔に広がるブドウ畑を見ながらジュネーブへ向かう。

ジュネーブからフランスに入り、ハイウエイをしばらく行くと、カーブの手前に「le Mont Blanc(モンブラン)」と書かれた看板が一際大きく立っている。
道は円を描くように大きく左に曲がる。そして、まっすぐのびた車道のその先、遙か上方に忽然とモンブランは姿を現す。さして特徴のある形ではないが、なだらかな肩に太陽光線を受けてやんわりと輝く様はやはり美しい。
シャモニーはアルヴ川沿いの谷間に広がる人口1万人ほどの町。モンブランへの登り口、またアルペンリゾートの基地としても、一年中観光客の途絶えるときがない。

冬はスキー、夏ならゴルフもいいが、コテージに宿を取り、仲の良い友人とフランス料理に舌鼓を打ったりお茶の時間をたっぷり持つのもいいし、ただ町の中をそぞろ歩くだけでもいい。シャモニーにはそうした華やかな魅力がある。

シャモニーのコテージ
 
美しくカラフルな花で思いっきり飾られた家々の間からは、モンブランが気高く顔をのぞかせる。

   
 
72人乗りの大型ゴンドラは、急角度でぐいぐいと斜面に沿って高度を上げていく。

窓の向こうに広がるシャモニーの町が見る見る小さくなり、代わりに丈の低い草地や雪渓を抱いた岩肌が眼前に広がり、やがて何万年の時を刻む氷河が目の前にあらわれる。


ゴンドラを乗り継いで標高3,842メートルのエギーユ・デュ・ミディに降り立つ。

そこはまさに別世界。
複雑な形をしたアルプス屈指の山々が折り重なるようにどこまでも続く。空は晴れ上がり、氷るように冷たい空気が頬を刺す。

テラスからの眺めは遮るものなど何もない空間の広がり。何度も深く息を吸い込む。時間のたつのを忘れてしまいそう。



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